チョコレートの原料は、カカオの木になる果実（カカオポッド）の中に有る種子です。果実の殻（カカオ実の中はほとんど種子のみで、きちんと並んでぎっしりと詰まっています）をばらして、カカオ豆を包む白い膜状物質（パルプ）ごと取り出し、発酵させます。発酵で風味が増し、独特の香りを放つようになります。発酵したカカオ豆を乾燥・選別して出荷します。
工場でカカオ豆を選別、焙煎、粉砕、除皮し、カカオ豆からカカオニブを取り出します。カカオニブを細かにすりつぶすとカカオマスになります。カカオマスはタンクに貯蔵され、チョコレートやココアの原料となります。カカオ自体は苦味の強い食品です。一般的には苦味は敬遠されていますので、チョコレート製造には砂糖、ミルクなどの甘味を足します。普通のチョコレートは、包装紙の裏側の原材料名は砂糖が一番前に書いてあるのは、このためです。
一方、苦味は心を沈静化して落ち着かせると言われています。コーヒー、緑茶、ココアを飲むとリラックスすると思います。チョコレートもカカオの苦味があり、安らぎを与えます。
苦みのあるカカオと、甘味成分の砂糖や多くのピーナッツを配合したピーナッツチョコは、苦みが昼間や夜間に興奮を静め、ピーナッツが活力を与える健康食としてお奨めします。

　２月下旬から２週間アメリカのワシントン州シアトル市に仕事で滞在してきました。
　シアトルは坂の多い街で、良港を抱え、マイクロソフト、アマゾン、スターバックスなどの本社があり、街は飛躍的に成長しています。シアトルは、チョコレートとコーヒーの街でも有名です。コーヒーとカカオは南米とアフリカ輸入が多いので、東海岸が多いはずですが、アジア志向の西海岸のシアトルがコーヒー、チョコレートNo1の街になった理由が解せません。
No1の街でチョコレートに感じたことは「ビターチョコ」化です。高濃度カカオ成分チョコの華盛りです。従来、チョコレートは甘い美味しい菓子で人気を得てきましたが、健康志向となり、砂糖大量使用チョコは不健康と烙印が押され、代わって砂糖を抑え、高カカオのビターチョコが一躍健康食品に浮上しました。お菓子から健康食品への華麗なる変身といえます。米国での高カカオチョコの表現は「Dark」という表現で統一されています。アメリカのおしゃれなスーパー「Trade Joe’s」で買ったチョコの商品名は「DARK(70%)Cacao塩味」「Chili 70% dark」「The dark chocolate 85%Cacao」などです。チョコレートの健康効果は健康成分「カカオポリフェノール」を豊富に含むためです。
カカオポリフェノールは抗酸化力があり、生活習慣病の改善などの健康効果が期待されます。ポリフェノールは沢山食べるとそれだけ健康になるということはありません。健康にはチョコレートを少なくとも1日10g程度食べましょうがお奨めです。

　暑くなれば当然ながら冷たい食品が欲しくなります。特に真夏は冷房や、冷たいドリンクが欲しくなりますが、暑い時にはたっぷりな汗で身体を冷やすという訓練をしなければ、汗をかくことのできない体になってしまいます。
チョコレートについては、暑い時冷やして食べるべきかの命題が浮上します。チョコレートは冷やすほど美味しいかの問題でもあります。温度と味の関係を見てみましょう。チョコレートは苦みと甘味の相互関係があります。カカオはそれだけだと苦みが強く、砂糖や粉乳を入れて美味しいチョコレートに仕上げています。
甘味は体温付近の温度が一番強く感じます。苦みは熱ければ薄まり、冷えれば強く感じます。暑い中で食べるチョコレートは甘味が強く、苦みが減少します。一方、冷蔵庫に保存した冷たいチョコレートは硬く歯ごたえが良くなりますが、苦みは強く感じます。
最近は、ミルクチョコレートの他に、苦みの強いハイカカオチョコレートも増えてきていますので、温度との相関性を考えて好みの食べ方を見つけてはいかがでしょうか。
私は暑い時のチョコレートは、普通の冷房の中で、冷蔵庫に入れずそのまま食べるのが好みです。

　いよいよ秋の候に入りました。漢方医学に陰陽論がありますが、一日では昼間が陽（太陽）で、夜が陰（太陰、月のこと）です。一年では十月から三月までが陰、四月から九月までが陽の候と見ます。九月までは徐々に陽が短くなり、十月から急に短くなります。これを“秋の夜のつるべ落とし”と表現し、陰の候に入ったことを表わします。
そこで、秋になり陰の季節になりますと、冷やしたチョコレートだけでなく、暖かいチョコレートが欲しくなります。ホットチョコレートといえば、日本では「ココア」の飲み物となります。アメリカではホットチョコレート、フランス語ではショコラショー。ところが最近では喫茶店でココアと注文しますと、「ホットですか、アイスですか」と聞かれます。夏の暑い日にココアといいますと、アイスココアが自動的に出てくることがあるほど一般的になりました。欧米では未だアイスココアはメニューに無いようです。日本は料理では常に先を走っています。
喫茶店でホットでもアイスでもココアを注文しますと、砂糖が入っています。ココアは元来かなり苦いものなので、砂糖を入れて飲みやすくしています。ただ私は、ココアはコーヒー同様に苦みを楽しむものだと思うので、あまりに甘いと興味半減です。しかし、全く砂糖が入っていないと本人が砂糖をたっぷり入れることになり、健康を考えるとたくさん入れにくいというジレンマに陥りがち。よって砂糖を少し入れて出した方が無難でしょう。 いずれにしろ、ココアは日本茶、コーヒー同様に苦みを楽しみ、心を落ち着かせる飲料と考えるのが良いでしょう。