第9期 叡王戦

主催 / 株式会社不二家 公益社団法人日本将棋連盟 特別協賛社/ ひふみ 協賛社 / 中部電力株式会社 株式会社豊田自動織機 豊田通商株式会社 日本AMD株式会社 アパリゾート佳水郷

  • 第1局勝利

第9期叡王戦五番勝負

藤井聡太叡王と挑戦者伊藤匠七段が
叡王を賭けて五番勝負を行います。
先に3勝した棋士が叡王となります。
(タイトルは2024年4月現在)

  • 挑戦者 伊藤匠
  • 第8期叡王 藤井聡太

棋士として、理想の勝ち方、憧れる勝ち方がある。

  • YES
    一度も悪くなることなく、徐々に形勢を良くして勝つ、いわゆる藤井曲線と呼ばれるような将棋が理想です。
  • YES
    終盤まで難解な局面が続く将棋が一つの理想だと思っています。

勝ち負けの後の切り替えは早い方だ。

  • YES
    負けた時も眠れないことはあまりなく、基本的に一回寝れば切り替えられると思っています。
  • YES
    振り返りをした後は気持ちを切り替えるようにしています。

おやつ選びは直感で決める。

  • No
    全ての選択肢を見た上で、対局中の食べやすさなど色々な要素を考えて消去法で選んでいることが多いです。
  • No
    どれも美味しそうで、長考してしまうことが多いです。

子供のときの自分にかけたい言葉がある。

  • YES
    藤井さんにぼこぼこにされるから今のうちにもっと頑張りなさいと伝えたいです。
  • No
    特にありません。

将棋に限らず、基本的に負けず嫌いだ。

  • YES
    基本的に負けず嫌いで、負けることが嫌なので他のゲームはあまりやりません。
  • YES
    最近は以前ほどではなくなってきましたが、根本は昔から変わっていない気がします。

強くなるために参考にしているもの・人・考え方がある。

  • Yes
    藤井叡王の将棋は非常に洗練されているので、毎局盤に並べています。
  • YES
    棋譜中継に毎日目を通しています。

最近、注目しているニュースや話題がある。

  • No
    ニュースはほとんど見ないので、世間で起きていることは何も分かりません。
  • Yes
    AIやコンピューティングに関する話題は気になっています。

新しい戦い方や攻め方を積極的に
取り入れていく方だ。

  • Yes
    その戦い方が優秀だと思ったらすぐに取り入れるタイプだと思います。
  • No
    新しい指し方を会得するには時間がかかると思っています。

五番勝負日程

※日程は予告なく変更になる場合がございます。

第1局 4月7日(日)ー 愛知県・か茂免
					/第2局 4月20日(土)ー 石川県・アパリゾート佳水郷/第3局 5月2日(木)ー 愛知県・名古屋東急ホテル/第4局 5月31日(金)ー 千葉県・柏の葉カンファレンスセンター/第5局 6月20日(木)ー 山梨県・常磐ホテル 第1局 4月7日(日)ー 愛知県・か茂免
					/第2局 4月20日(土)ー 石川県・アパリゾート佳水郷/第3局 5月2日(木)ー 愛知県・名古屋東急ホテル/第4局 5月31日(金)ー 千葉県・柏の葉カンファレンスセンター/第5局 6月20日(木)ー 山梨県・常磐ホテル

五番勝負中継

第9期叡王が誕生する瞬間を見届けよう!

第2局

420日 (土) 8:30~ 放送

ABEMA アベマで叡王戦を観る

外部リンクに接続します。

対局おやつ

タイトル戦の10時と15時に設定される「おやつ」タイム。
五番勝負の対局で、
不二家が提供した「おやつ」を紹介します。

第1局

10時のおやつ

  • バウムクーヘン
  • プレミアム濃い抹茶のケーキ(鹿児島県産一番茶抹茶使用)

15時のおやつ

  • プレミアム濃い抹茶のケーキ(鹿児島県産一番茶抹茶使用)
  • ペコちゃんのほっぺ(ミルキークリーム)

next coming soon…

叡王戦 お菓子BOX

叡王戦限定で提供される
「ペコちゃんお菓子BOX」の中身を公開。
勝負の一手を後押しするお菓子にも注目です!

叡王戦 お菓子BOX

叡王戦 五番勝負 お菓子BOXの中身

  • カントリーマアム チョコまみれ

    カントリーマアム
    チョコまみれ

  • ホームパイ チョコだらけ

    ホームパイ
    チョコだらけ

  • カントリーマアム シン・じわるバター

    カントリーマアム
    シン・じわるバター

今回の五番勝負ではこんなお菓子が入っているよ。
棋士が食べるお菓子にも注目してみよう!

叡王ヒストリー 叡王ヒストリー

叡王戦の歴史をつくってきたのは、歴代の王者たち。
叡王の獲得者が電王戦優勝ソフトとの、
まさに“叡智”をかけた対戦があった
第1期(〜第2期)から始まり、
叡王戦は、一般棋戦から8つ目のタイトル戦へと
昇格しました。
歴代叡王たちの当時の熱戦とエピソードから、
叡王戦の歴史を紐解く物語です。

第1期

初代叡王が”コンピュータ棋士”に示した敬意 初代叡王が”コンピュータ棋士”に示した敬意

棋士たちは段位別に分かれ、自らの意思で出場を決定。このユニークなシステムの中、決勝三番勝負では山崎隆之八段が郷田真隆九段を2勝0敗で下し、見事優勝。山崎八段はこの勝利により第1期電王戦の出場権を手に入れた。

第1期叡王 山崎隆之

2015年12月13日に京都国立博物館で⾏われた第1期叡王戦決勝三番勝負第2局にて、126手で山崎隆之八段が郷田真隆九段に勝利し初代“叡王”の称号を獲得。第1期電王戦二番勝負に出場するも電王PONANZAに惜しくも2連敗を喫する。

2015年12月13日叡王獲得

叡王戦こぼれ話

栄えある初代叡王に輝いたのは、関西のホープ、山崎隆之八段だった。当時、棋士とコンピュータのどちらが本当に強いのか、という議論が盛んだった時代。叡王に就位した山崎は、2016年度初めにコンピュータソフト(PONANZA)と対局を行った。

山崎は入念な準備を整え、関西の若手棋士たちと共に研究を重ねて対局に臨んだ。持ち時間もタイトル戦に匹敵する2日間と設定されたため、人間(棋士)も実力を発揮できる展開が予想され、専門家の多くは勝負を五分五分と見ていた。

第1局では、後手番の山崎が、先手番のソフトPONANZAの好手(3八銀)に上手く対応できずに惜敗。注目の第2局では、山崎の先手番となり、彼が得意とする相掛かりの展開に持ち込む研究の手順を用意して対局に臨んだとされる。しかし、山崎の初手はどうだったのか?
羽織袴で正座し、コンピュータに対峙し、深々と挨拶を交わした彼は1分考えた。控え室で見守る関西の若手研究仲間たちは、「初手は研究手順の『2六歩』であろう」と予想していた。しかし、山崎は少し頷いた後、歩を持ち「☗7六歩」を指した。

控え室では大きなどよめきが沸き起こった。「なぜ研究手順を指さないのか!」と驚く関西の若手仲間たち。その様子は今も鮮明に記憶されている。山崎は、なぜ初手の研究手順(コンピュータの不備を突く手順)を指さなかったのか。この疑問は控え室の棋士や終局後の山崎のコメントからも明らかになる。検討室には、山崎の師匠である森信雄七段門下の棋士が集結していた。千田翔太五段、大石直嗣六段、澤田真吾六段、糸谷哲郎八段が検討に参加していた。初手の7六歩に対し、千田五段は「山崎叡王は対PONANZA対策をしていたが、わざと指さなかったのだ」と述べた。

終局後の山崎隆之叡王は、「想定通りには全く進まず、思いつきでした。相掛かり系の将棋を目指していましたが、予定通りにはいかなかった。プロとして、もっと先手番で工夫し、攻撃的に動けばよかったと後悔しています」と述べた。

一棋士としての矜持を示した山崎の創造性豊かな将棋スタイルには、今も多くのファンがいる。

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第2期

叡王が切り拓いたコンピュータとの共存の道 叡王が切り拓いたコンピュータとの共存の道

羽生善治三冠の参戦が注目を集めたが、佐藤天彦に敗れベスト4止まり。決勝では佐藤天彦九段が千田翔太五段を2勝0敗で破り、優勝。これにより佐藤九段が電王戦への出場権を獲得した。

第2期叡王 佐藤天彦

第74期名人戦(2016年5月)で羽生善治三冠から名人位を奪取。2017年4月1日・5月20日に行われた最後の電王戦である第2期電王戦二番勝負では初のタイトル保持者として出場するも電王PONANZAに敗北を喫する。

2016年12月11日叡王獲得

叡王戦こぼれ話

決勝の3番勝負を制したのは佐藤天彦名人。この勝利により棋界は大きな注目を集めた。当時、叡王の獲得者は、第1期に続き、時の電王戦優勝ソフトとの対戦が定められていた。佐藤にとってこの対戦は、コンピュータとの戦いであると同時に名人戦の防衛戦への準備でもあった。対戦相手は電王PONANZAだった。

第2期叡王として、佐藤は2017年4月1日と5月20日に行われた最後の電王戦、第2期電王戦の二番勝負に初のタイトル保持者として出場した。しかし、彼は電王PONANZAに敗れ、「完敗」という結果に終わった。しかし、コンピュータ相手に悩み、必死に考える佐藤の姿に、観戦者は感動し、勝負の行方を忘れてしまった。

佐藤が振り返る当時のコメントからは、自己分析を冷静に行い、対局に臨んでいたことが伺える。「指す手の精度が非常に高かったですね。(中略)見透かされるような発想や、想像もしなかった手があったりして、学習や経験に基づく印象と、どこからその発想が生まれたのか分からない部分が絶妙に混ざり合った指し方には、非常に興味を惹かれました」。

一棋士として、そして棋界の代表者として、佐藤は勝負をする顔と研究者としての顔を兼ね備えていた。彼はコンピュータと棋士の共存の道を切り開いた先駆者であると言えるだろう。

佐藤は次のように棋界の未来を語っている。「勝ち負けに囚われず、情緒や物語性は人間特有の強みです。コンピュータ将棋ソフトがさらに高性能になることは間違いありません。(中略)身を乗り出す仕草や眉間のしわ、額に汗を滲ませる様子には、棋士の情熱や葛藤が込められています。観戦者が一喜一憂しながら感情を共有しやすいのは、同じ人間が指す将棋だからでしょう」。

叡王戦の歴史は、コンピュータと棋士が共に新たな道を歩み始めた歴史であり、佐藤叡王はその道を紡いだ棋士の一人である。

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第3期

叡王となった男と記録係の物語 叡王となった男と記録係の物語

叡王戦はこの期から一般棋戦からタイトル戦へと昇格。2018年の七番勝負で、髙見泰地六段が金井恒太六段を4勝0敗で下し、新たな叡王に輝いた。

第3期叡王 高見泰地

石田和雄九段門下。2011年、四段へ昇段。2018年1月に六段昇段。第3期叡王戦で自身初のタイトル戦進出。金井恒太六段との決勝七番勝負を制し、新たにタイトルとなった叡王位を獲得。

2018年5月26日叡王獲得

叡王戦こぼれ話

第3期からは、正式に叡王戦優勝者はタイトル扱いとなった。七番勝負に向けて、全棋士が段位別に分かれて頂点を目指すシステムは変わらず続いた。この第3期本戦では、第2期叡王である佐藤天彦名人がシードされ、唯一予選を勝ち上がった渡辺明竜王を除く他のタイトル保持者がいない状況で行われた。決勝七番勝負は、初戦で佐藤を破った金井恒太と、準々決勝で渡辺を破った高見泰地という、初挑戦者同士の組み合わせとなった。両者ともタイトル初挑戦であり、七番勝負の勝者が初のタイトルを手にすることとなった。タイトル戦で両対局者が共に初のタイトル挑戦となるのは史上初であり、五段であった高見は決勝進出により六段に昇段し、叡王獲得で七段に昇段した。

しかし、その道程は大きな苦しみに満ちていた。準決勝を控えた頃には、プレッシャーにより心身が締め付けられ、食欲不振に陥ったという。そして決勝七番勝負の約2ヶ月間は、かつてない孤独を感じたと高見は振り返る。「将棋盤を挟んで対峙するのは相手と自分だけです。他人が介入する余地はなく、自分の力で現状を打破していくしかありません。すさまじい孤独感の中、それでも絶対に勝ちたいという気持ちは強く持っていました。…後がないという覚悟で挑みました」

そんな孤独との戦いを盤側から憧れを持って見つめている青年がいた。棋士は顔を合わせなくても、「棋譜」という共通語で繋がっている。序盤のセンス、中盤からのバランス感覚、終盤の凌ぎ合いを棋譜から感じ取り、高見が関西で対局すると分かると、記録を取ることに率先する奨励会員がいた。高見は自分の将棋が観られていること、そして憧れの眼差しで記録を真剣に取り、感想戦を食い入るように見つめて学ぶ姿に気づいていた。その憧れを感じながら、高見は孤独に耐え、自分の将棋を貫き、叡王の栄光を掴んだ。

プロの将棋は常に観られており、棋譜という形で残る。高見も叡王となってからも、その奨励会員に声をかけ、将棋や食事に誘うなどした。高見が叡王を獲得し、世間の注目を集めた後も、交流は続いた。2021年3月6日、井田明宏が三段リーグで四段昇段を決めた日、高見は真っ先にお祝いに駆けつけた。憧れた者が、今度は同じ棋士として歩みを始める日でもあった。高見の先輩としての礼儀と後輩への心配りは、しっかりと後輩棋士へと伝えられている。

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第4期

「負けない将棋」が生んだ初タイトル 「負けない将棋」が生んだ初タイトル

叡王戦第1局は初の海外台湾での対局となった。永瀬拓矢七段が髙見泰地叡王を4勝0敗で破り、タイトルを奪取。これにより永瀬七段は自身初タイトルとなる叡王を手にした。

第4期叡王 永瀬拓矢

安恵照剛八段門下。2009年、四段へ昇段。第87期棋聖戦、第43期棋王戦でタイトル戦へ進出するもタイトル獲得ならず。第4期叡王戦で高見泰地叡王(当時)との七番勝負を制し、初のタイトル獲得となった。

2019年6月1日叡王獲得

叡王戦こぼれ話

第4期叡王となった永瀬拓矢は、遠山雄亮六段、丸山忠久九段、及川拓馬六段、郷田真隆九段、菅井竜也七段との対戦、そして高見泰地叡王とのタイトル戦を経て、初タイトルを獲得。A級棋士や他のタイトルホルダーとの対戦なしでのタイトル制覇は、若手の台頭と新時代の幕開けを象徴するものであった。

「バナナ、冷えピタ、フィナンシェ…」と聞いて、永瀬を連想する人は熱心な将棋ファンであると形容される。永瀬は、一日10時間以上の研究を日常とし、相手が誰であろうと常に戦略を持って対局に臨む。これが彼の「負けない将棋」のスタイルである。

海外でのタイトル戦、叡王戦第1局での高見叡王に対する逆転勝ちは、永瀬のキャリアにおいて特筆すべき局面であった。「実力を出し切って、自分なりにベストを尽くした結果、逆転できたのは幸運だった。ただ、その実力では厳しい局面もあった」と、永瀬は当時のインタビューで述べている。彼はこの対局を通じて自己分析を深め、次の対局に向けたテーマを確立した。

永瀬は個性豊かな棋士であり、加藤一二三九段など他の棋士との違いを示している。例えば、加藤は対局中に同じメニューを注文することで余計な思考を避けるのに対し、永瀬は自分の信念に従いつつも柔軟に変更を加えることがある。四段昇段時には振り飛車党として知られる守備的なスタイルであったが、その後、居飛車中心のスタイルへと転換し、多様な棋士のスタイルを吸収して自身の棋風を進化させた。

昔は対局室が密室で、限られた観戦者しか対局の様子を見ることができなかった。しかし、現代ではインターネット中継により、対局の全てが公開されている。これにより、対局中の棋士の思考や休憩時間も明らかになった。永瀬は対局に集中するタイプであり、周囲の状況に左右されずに将棋に没頭する姿勢を貫いている。特に感想戦では、その深い分析と熱心な検討が、まるで対局が続いているかのような錯覚を観戦者に与えることがある。

叡王戦が始まる半年前、永瀬は色紙に「不倒」と揮毫した。「負けない将棋」、つまり不倒へのこだわりが、叡王永瀬拓矢を生み出したのである。今も永瀬はその奥にあるものを模索している。

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第5期

第9局までもつれた将棋史に残る死闘 第9局までもつれた将棋史に残る死闘

挑戦者決定戦では、豊島将之竜王が渡辺明三冠を2勝1敗で下し、永瀬拓矢叡王への挑戦権を獲得。COVID-19の影響で開催が遅れた七番勝負は、最終的に豊島将之竜王が叡王を獲得した。

第5期叡王 豊島将之

桐山清澄九段門下。史上初めての平成生まれの棋士。2019年、第77期名人戦、第32期竜王戦を制し、令和初の竜王名人となる。第5期叡王戦で永瀬拓矢叡王(当時)との第9局にもつれる歴史的な死闘を繰り広げた末、タイトルを獲得。

2020年9月21日叡王獲得

叡王戦こぼれ話

第5期の叡王戦は変則的な持ち時間で行われた。第1、2局は5時間、第3、4局は1時間、第5、6局は3時間、そして第7局以降は6時間の持ち時間だった。持ち時間の変動にも関わらず、叡王の頂点を争う二人の技術は影響されることなく、非常に高いレベルの激闘が展開された。これは将棋史に残る死闘であった。

将棋は引き分け(持将棋や千日手)が非常に少ない競技であるが、トップレベルの戦いでは時に確率をも凌駕することがある。第5期叡王戦では、第2局で持将棋が成立し、これは叡王戦七番勝負としては史上初のことであった。また、持ち時間1時間の第3局でも持将棋が成立し、タイトル戦で2度の持将棋成立は史上初の出来事であった。予定通り夜から第4局を実施し、これが将棋界史上初のタイトル戦第9局に繋がった。

対局者である永瀬拓矢叡王と挑戦者の豊島将之竜王は、対局規定の変更にも柔軟に対応し、盤上で最善の手を模索する姿を多くの将棋ファンが熱心に見守った。この時期は、世界中に新型コロナ感染が広がり、東京オリンピック2020が延期された時期でもあり、将棋界ではAIの研究が一般的になり、藤井聡太が台頭してきた時期でもあった。

豊島は孤高の棋士である。彼はあまり多くを語らないが、その指し手と姿で私たちに多くを示している。豊島は研究に関しても自らのスタイルを重視し、AIでの研究を積極的に取り入れ、人間との研究VS戦を中止して、盤上での最善手を模索し、対局に臨むことを貫いていた。結果、この叡王獲得で三冠王となり、棋界の第一人者になった。

多くの人が自宅待機している中、ネット中継で彼らの一手一手に対して、「これこそが人間対人間の将棋だ」とか、「ネットで観戦するだけで涙が出てくる」といった賞賛と驚きの声が上がった。これは、持将棋を最後まで自分の持ち時間ギリギリまで考え着手する二人の無言の会話に対する感嘆の声でもあった。第9局が終わった時、ベテランの将棋記者は、「AIの台頭でプロ棋士の存在価値が危ぶまれるという声を聞いていたが、これは憂鬱なことであった」と涙を浮かべて語った。人間が必死に考え、自身の能力を駆使して盤上での会話を楽しむ姿に、多くの将棋ファンから拍手が送られた。

この第5期叡王戦9番勝負は、将棋界の未来、棋士の在り方、方向性を示したタイトル戦であった。永瀬と豊島新叡王によって示された足跡(棋譜)はとてつもなく偉大である。

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第6期

藤井聡太が唯一タイトル戦最終局を戦った棋戦 藤井聡太が唯一タイトル戦最終局を戦った棋戦

この期から主催がドワンゴから不二家へ変更され、番勝負の形式も変更。挑戦者決定戦で藤井聡太王位・棋聖が斎藤慎太郎八段を破り、豊島将之叡王に挑戦。五番勝負で藤井が勝利し、19歳1か月で最年少三冠を達成した。

第6期叡王 藤井聡太

杉本昌隆八段門下。史上最年少(14歳2か月)で四段昇段を果たした。その後も、昇段、タイトル獲得、タイトル防衛などで最年少記録を次々と更新。第6期叡王戦で豊島将之叡王(当時)を破り、タイトルを獲得。

2021年9月13日叡王獲得

叡王戦こぼれ話

第6期より、叡王戦は五番勝負で、持ち時間4時間のチェスクロック方式に変更された。挑戦者として現れたのは藤井聡太。既に王位と棋聖の二冠を持っていた藤井は、さらに叡王のタイトルも獲得し、「王位・叡王・棋聖」の三冠王として最年少記録(19歳1ヶ月)を更新した。これは、藤井の八冠達成への道のりを加速させるきっかけとなった。

振り返ると、この第6期叡王戦は藤井にとって大きな意味を持ったことがわかる。その後、藤井はタイトルの防衛と奪取を繰り返すが、タイスコアで迎えた最終局を経験したのはこの第6期叡王戦だけであった。しかもその相手は豊島であった。第6期叡王戦の最終局での勝利が、その後の八冠完全制覇への布石となったと感じられる。挑戦者であったとはいえ、最終局の結果は藤井の棋士人生にとって非常に大きなものだった。勝者は大きな自信を得る一方で、敗者は敗北に向き合い、新たな自信を築き直さなければならない。プロの世界での勝敗は非常に厳しいものである。今、改めて最終局の棋譜を並べ、藤井の心境を探ると、その時の時間の使い方や様子が思い出される。やはり藤井の目は勝利だけに向けられていたのではなく、自己の「探究」にあったと言える。

就位式で藤井は「持ち時間4時間で決断を早めることを心掛けた。最終局まで戦い抜きましたが、しっかりと対局できました。糖分補給をしながら対局できたのも良かったです。五番勝負ではおやつ選びも大きな楽しみでした」と謝辞を述べた。

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第7期

叡王戦史上初の防衛 叡王戦史上初の防衛

挑戦者決定戦で出口若武六段が勝利し、藤井聡太叡王に挑戦。しかし、藤井叡王が3勝0敗で勝利し、叡王戦での初のタイトル防衛を果たした。藤井時代への序章の扉が開いた。

第7期叡王 藤井聡太

2022年5月24日叡王防衛

叡王戦こぼれ話

第7期は新星出口若武六段が登場した。関西の若手同士の挑戦者決定戦を制し、若い二人でのタイトル争いとなった。結果、3連勝した藤井によって、叡王戦史上初の防衛が果たされた。この第6期、第7期は全て先手番が勝利を収める結果となった。

将棋は先後の差が少ない競技である。しかしながら統計によると先手番の勝率が若干いい。AI研究での序盤の戦術が詳細化されているプロ棋戦においては戦型選択のアドバンテージが大きいという棋士もいる。しかし、藤井は誰もが悩む後手番での対応に対して常に自分の道を指す(進む)「後手8四歩」。後手番の藤井がお茶を一口飲み、心を落ち着かせて指すこの「後手8四歩」はデビューから変わらない。あのデビュー戦での先手加藤一二三九段の「7六歩」に対しての指し手に対しても同様であった。これは藤井の頑固さを示していると捉えるか、いや藤井の将棋に対する姿勢そのものであると考える棋士も多い。藤井はあるインタビュー記事で、「将棋は突き詰めると引き分けになるのではないか」というコメントを残している。言い換えれば、将棋における先手後手の差は、簡単に答えが出るものではないという信念があると言えるかもしれない。

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第8期

三連覇と、人間 VS 人間の将棋の醍醐味 三連覇と、人間 VS 人間の将棋の醍醐味

菅井竜也八段が挑戦者として登場したが、藤井叡王が3勝目を挙げ、叡王戦で初の3連覇を達成。各期の叡王戦は、将棋界における革新的なシステムやドラマチックな展開を通じて、その時代を彩る重要な出来事として記憶されている。特に藤井聡太叡王の活躍は、将棋界における新たな節目を示す出来事となった。

第8期叡王 藤井聡太

2023年5月28日叡王防衛

叡王戦こぼれ話

第8期は、振り飛車党の菅井竜也が挑戦者として藤井の前に現れた。専門家の中には、当時の菅井の振り飛車に対して藤井が若干苦手な傾向があるのではないかと予想する者もいた。菅井の振り飛車は捌きと独特の粘り強さ、終盤の切れにある。藤井のデビュー時に菅井が先輩棋士として藤井に敗北を付けていたことは事実である。藤井の成長と先輩棋士の意地がぶつかり合う対局となった。序盤、中盤、そして終盤の入り口まで均衡が保たれ、勝敗は最後の終盤のちょっとした一手で勝敗が分かれるという内容であった。

特に第4局の2つの千日手指し直しの後の最終局となった将棋はまさに激闘であった。一日3局お互い居飛車VS三間飛車の戦型で、総手数250手。両者とも自分のスタイルを曲げずにとことんと無言の会話を紡いでいて、「これこそ人間VS人間の将棋の醍醐味だ」と多くの将棋ファンに感動を与えた。

終局後のインタビューで藤井は、「今回シリーズを通して相穴熊の戦いが多かったのですけれども、中盤から終盤にかけて、距離感を測れないという局面がいくつかあったかなと感じています。その辺りの判断力をもっと上げていかなければいけないのかなと感じたところはありました。全体を通しては、非常に大変な将棋が多いシリーズだったなと感じています」と述べている。

2023年11月藤井に内閣総理大臣顕彰が贈られた。返礼品として「雲外蒼天」という言葉を揮毫した藤井。まさに叡王最終局に「探究」を積み重ねてきた結果が蒼い空であった。

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参考文献&資料

  • ・叡王戦中継サイト
  • ・ABEMA
  • ・日本将棋連盟
  • ・将棋世界誌
  • ・立教大学広報誌・HP
  • ・ニコニコニュース
  • ・日刊スポーツ
  • ・藤井聡太全局集
  • ・Number Web
  • ・週刊アスキー
  • ・GIZMODO

安次嶺 隆幸 (あじみね たかゆき)

安次嶺 隆幸 (あじみね たかゆき)

東京福祉大学 教育学部教育学科 専任講師「将棋の教育的意義の研究」・「特別活動の指導法」における将棋の実践・効用・子どもの伸びしろを研究。
公益社団法人日本将棋連盟学校教育アドバイザー・「安次嶺教師塾」塾長
第44回将棋の日「特別表彰」受賞。将棋五段位授与。全国各地で教育講演を実施、模擬授業形式のライブ講演が好評。著書は「将棋を指す子が伸びる理由」「羽生善治の脳トレ1手詰め」(小学館クリエイティブ)「将棋に学ぶ」(東洋館出版)等多数。
日本将棋連盟HPで50回連載コラム【子供たちは将棋から何を学ぶのか】執筆。

https://www.shogi.or.jp/column/2017/04/3_11.html

インタビュー

第8期藤井叡王がインタビューに答えてくれました!

初の3連覇を達成された第8期叡王戦ですが、
菅井竜也八段との熱戦の五番勝負を振り返って、
予想していなかった一手、対応を悩んだ局面は
ありますか?
第2局・45手目で菅井竜也八段に☗8八飛と指されましたが、私が気づいていなかった手で、「しまった」と思いました。
そこから気持ちを切り替えて頑張ったのですが、第2局は敗れてしまいました。後から考えてみましても、とても素晴らしい手だと思いますし、大変勉強になりました。
持ち時間が短い叡王戦ですが、思考と決断の
メリハリの
つけ方については、どのような意識で
臨んでいますか?
叡王戦五番勝負は持ち時間が4時間と少ないので、時間配分がとても難しいと感じています。4時間の持ち時間の中で、悩ましい局面があれば考えることはできるのですが 、対局相手との残り時間の差が大きくなると苦しくなりますので、そうならないように意識したいと思います。
おやつの効果を感じたことはありますか?
対局中、長時間考えていると集中力が落ちてしまうので、おやつを頂いて糖分を補給しつつ、気持ちをリフレッシュしています。そうすることでまた集中力が続くようになります。
おやつの効果を感じたことはありますか?
対局中、長時間考えていると集中力が落ちてしまうので、おやつを頂いて糖分を補給しつつ、気持ちをリフレッシュしています。そうすることでまた集中力が続くようになります。
叡王戦五番勝負で召し上がった中で
印象に残っている
おやつはありますか?
あんみつが印象に残っています。不二家さんは洋菓子のイメージがありますが、『和』のあんみつも不二家さんテイストでとても良かったです。
想定になかった一手を指されたときの、対応のコツ、
対応力の磨き方はありますか?
また、難しい局面で決断する一手は、
どのような心持ちで
指されていますか?
予想していない一手を指されたときは、やはり動揺してしまいますが、なるべく平常心を保つように心がけています。そしてこれまでの先入観を捨てて、次の一手を考えるようにして います。
獲得4期目に挑戦する第9期叡王戦を迎えるに
あたっての
意気込みをお願いします。
叡王戦は第6期~第8期まですべて厳しいタイトル戦でした。第9期も厳しいものになると予想しています。見ていただいて楽しんでいただけるように、これまでの経験を活かして頑張りたいと思います。
前人未到の偉業を達成してなお、“今よりも実力を高める”とのお言葉がありました。これから先に進んでいくために、大事だとお考えになっていることはありますか?
自分の課題をしっかり把握して改善していくことがやはり大事だと思います。第8期叡王戦では振り飛車の菅井八段に苦しめられましたが、自分なりの課題も見つかりましたので、改善していきたいと思います。
獲得4期目に挑戦する第9期叡王戦を迎えるに
あたっての
意気込みをお願いします。
叡王戦は第6期~第8期まですべて厳しいタイトル戦でした。第9期も厳しいものになると予想しています。見ていただいて楽しんでいただけるように、これまでの経験を活かして頑張りたいと思います。
前人未到の偉業を達成してなお、
“今よりも実力を高める”とのお言葉がありました。
これから先に進んでいくために、大事だとお考えに
なっていることはありますか?
自分の課題をしっかり把握して改善していくことがやはり大事だと思います。第8期叡王戦では振り飛車の菅井八段に苦しめられましたが、自分なりの課題も見つかりましたので、改善していきたいと思います。
第6・7・8期叡王藤井 聡太
杉本昌隆八段門下。史上最年少(14歳2か月)で四段昇段を果たした。その後も、昇段、タイトル獲得、タイトル防衛などで最年少記録を次々と更新。第6期叡王戦で豊島将之叡王(当時)を破り、タイトルを獲得。
叡王戦賞杯

※棋譜や対局運営等については、将棋連盟にお問い合わせ下さい。

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