- 全粒のひきわり小麦「ブルグル」
- 長時間かき混ぜます
- ドライフルーツは細かくカット
- シナモンとアーモンドをトッピング
- 年に1度のアシュレ作りは夫婦一緒に
- お腹も大満足な伝統スイーツ
「アシュレ」
41種類の材料を使った、年に1度のスイーツアジアとヨーロッパの交差点、トルコ共和国。政治と宗教が分離されている世俗国家ですが、国民の多くがイスラム教を信仰しています。
日本のおよそ2倍の国土は、地中海、エーゲ海、マルマラ、南東アナトリア、東アナトリア、中央アナトリア、黒海の7つの地域に分けられています。このうち南東アナトリア地方は、昔から作物の収穫量が多い「肥沃な三日月地帯」にあるため、さまざまな種類の野菜、果物、穀物が豊富に採れます。
「アシュレ」はそんなトルコで収穫された豊かな食材に、宗教という要素が融合したようなスイーツで、イスラム教のヒジュラ暦、ムハッラム月の10日目に食べられています。
アシュレには「ノアの方舟プリン」という別名もあります。トルコ東部にあるアララト山にノアの方舟が漂着したとき、船内に残った食材をかき集めて作ったのがこのアシュレだった、という言い伝えがあるそうです。
幸運にも、私がイスタンブールに滞在した時期がアシュレを食べる日と重なっていたため、滞在先のご家庭でアシュレ作りのお手伝いをさせてもらいました。
細かく刻んだ材料をゆでたブルグルと合わせ、砂糖や牛乳を加えて、定期的にかき混ぜながら4時間ほど煮込めば──、おいしいアシュレの出来上がりです。
この調理を通して特に驚いたのは、材料の種類の多さです。地中海全域で食べられている全粒の挽き割り小麦「ブルグル」、レーズン、いちじく、リンゴ、アプリコットなどのドライフルーツ、ヘーゼルナッツにピーナッツ……といった材料を、きっちり41種類使うことが大切とされています。
さらに、その量にもびっくり。スーパーなどでは小家族用の「アシュレキット」というものが販売されているようですが、多くの家庭では、大きな鍋で大量に作ったアシュレをご近所にお裾分けするという習慣があるそうです。「この時期は、あっちこっちの家のアシュレを食べるから、体重管理が大変!」という声も耳にしました。
そんなアシュレの食感はとろっとしていて、お汁粉や七草粥のようです。柔らかくなったブルグルやフルーツのとろみに、時折混じっているナッツの存在が良いアクセントとなって、ついつい手が伸びてしまうスイーツでした。