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ズッパイングレーゼに必須のリキュール「アルケルメス」
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こちらは中部ペルージャのズッパイングレーゼ
ティラミスの元となった“家庭の味”
「ズッパイングレーゼ」
前回のコラムでご紹介したイタリアの国民的スイーツ「ティラミス」は、1960年代頃に北東部ヴェネト州トレヴィーゾにあるレストランのシェフが「あるスイーツ」をアレンジして創作したと言われています。ティラミスの元となったそのスイーツは、「ズッパイングレーゼ」。「ズッパ」の語源である「ズッパーレ」は「染み込ませる」、「イングレーゼ」は「イギリス風」を意味します。イギリスの伝統菓子「トライフル」がイギリス貴族との交流によってイタリアにもたらされ、ズッパイングレーゼとなったという説もあるそうです。
ズッパイングレーゼは、「アルケルメス」というリキュールを浸したスポンジ、カスタードクリーム、チョコレートが層になった、ずっしりとボリューミーなデザートです。飲料をスポンジに染み込ませる工程や層を作るところがティラミスとよく似ていますね。
このデザートに欠かせないアルケルメスの起源は、18世紀にフィレンツェの修道院で造られていた薬草酒だと言われています。鮮やかな赤色は、乾燥させたエンジムシという昆虫から抽出する着色料「コチニール」の色。アルコール度数は約30度と高めで、香水のような華やかな香りが広がる甘いお酒です。
このスイーツは地方や家庭によってそれぞれのレシピやスタイルがあり、それが特徴のひとつとなっています。
たとえば南部のナポリのズッパイングレーゼは、全体が真っ白なメレンゲでデコレートされていて、外側がサクッとしています。
私が滞在していた中部のウンブリア州ペルージャでは、スポンジの代わりに「トルコロ」という大きなドーナツのような形のリングケーキが使われています。またメレンゲではなくカスタードクリームでコーティングされており、ココアクリームが添えてありました。
ズッパイングレーゼは、まさにイタリアの家庭の味。家庭的な味わいがマンマ(お母さん)の温かさを思い出させてくれるような、とても魅力的なスイーツです。
(2026年1月掲載)