ホンジュラスは北海道の1.3倍ほどの国土面積しかない小さな国ですが、大まかに9つものグループの先住民族が存在しています。
今回私とペコちゃんは、首都のテグシガルパを離れて西へ。エルサルバドルとの国境にあるインティブカ県で暮らす、メソアメリカ系の先住民族「レンカ族」の村を訪ねました。
レンカ族はホンジュラス西部の高地と、隣国のエルサルバドル東部に集中していて、ホンジュラスには10万人ほどが暮らしています。
インティブカ県は、ドライブをしながら景色を眺めているだけで十分楽しめるほど、風景が美しい地域です。
中でも絶景なのは、「Laguna de Chiligatoro」(チリガトロ湖)。
緑が生い茂る丘の連なりをボートから眺めながら、ゆったりと水上散歩を楽しむのがお勧めです。森の鮮やかな緑と、それを反映した湖面の艶やかな緑。まるで世界中の緑色を集めてきたかのような光景に包まれます。
ちなみに湖から見える丘では、女性の労働支援としてバラの栽培が行われているそうです。
レンカ族の村へ到着するなりロケット花火が打ち上げられ、盛大な歓迎を受けました。
私がこの村を訪ねた初めての日本人だったそうで、どんどん人が集まってきて、最終的には100人近くの村人とご挨拶することができました。
レンカ族の人たちの顔立ちは私がこれまで出会ってきた中米の先住民族の人たちと似ているのですが、特徴的なのは、彼らが着ている民族衣装です。
中米の先住民の民族衣装と言えば、伝統の織物や染物などでパッチワーク柄を描いた衣装だったり、布を腰に巻くものだったりする場合がほとんどなのですが、レンカ族の衣装は全く違います。
女性たちはテカテカしたシルクのような素材のプリーツワンピースを着て、パニュエロ(スカーフ)を頭に巻いています。とてもモダンな雰囲気で、私の中の民族衣装に対するイメージの幅がぐんと広がりました。
男性が着ているシャツの前立て(ボタンをかける部分)や襟には、カラフルな織物のデザインが入っています。シンプルですが赤や紫が良いアクセントになっていて、とってもおしゃれです。
レンカ族の家の周辺には鶏や豚などが放し飼いで飼育されていて、時が来れば食料となります。
様々な植物も植えられていて、それらは薬草として使っているとのことでした。驚いたことに、日本でもよく見かけるブーゲンビリアもその中にありました。花びらに見える色のついた葉を乾燥させてお茶として飲むと、気管支炎や風邪、喘息などの咳の症状に効くのだそう。まさに生活の知恵ですね。
この村は数年前まで、もっと伝統的な暮らしを営んでいました。つまり、男性は畑仕事をして作物を収穫し、女性は家事と子育てに専念していたのです。
日本で地域おこしとして小さな町や村で様々な活動が行われているように、ある時レンカ族の村でも、「伝統織物の技術を使おう」「女性の働き場を作ろう」と改革が起こり、織物のコミュニティが作られました。
現在、作業用の小さな小屋には機織り機が6台設置してあって、伝統織物のスカーフや、靴、アクセサリーといった民芸品などを制作しています。
織物の担い手である女性たちの1日の始まりは早く、なんと午前3時には起床して、釜でパン作りを始めるそう。そして家族の朝食の準備や家の掃除などを済ませた後、作業小屋での仕事に取り掛かります。
お話を聞いているととても大変そうなのですが、彼女たちはコミュニティのリーダーを中心に一致団結して、生き生きとプロジェクトに取り組んでいました。
「以前は村を離れていく若者が多かったけれど、織物のコミュニティができてからは村に残って仕事をする人が増えました。それに、私にも家事以外にできることがある、ということに気付くことができました」
レンカ族のコミュニティが上手くいっている理由の1つにはもちろん、女性たちが仕事を得て収入が増えた、ということがあると思います。
私はさらにもう1つ大きな理由として、同じ民族同士で団結することで、一人ひとりが民族としてのアイデンティティを意識する機会が増えた、ということが挙げられると考えています。民族の一員であるという誇りが、一個人として生きていくための自信にも繋がっていくのでしょう。
民族の伝統を繋ぎ、人々に仕事と生きる活力を与えているこのコミュニティの存在は、ホンジュラスの小さな村のプロジェクトという枠組みを超えて、とても大きな意味を持っていると感じました。
ERIKO(エリコ)
モデル・定住旅行家
鳥取県出身。東京コレクションでモデルデビュー。高校在学中、語学留学のためイギリス、アメリカ合衆国に滞在。高校卒業後、イタリア、アルゼンチン、ロシア、インドで語学習得のための長期滞在をきっかけに、様々な土地に生きる人達の生き方や生活を体感することに興味を抱き、スペイン語留学で訪れたアルゼンチンでの生活をきっかけに、ラテンの地と日本の架け橋になるという目的を持って、2012年から1年4ヶ月をかけて中南米・カリブ25ヶ国を旅する。現在モデルと並行し、「定住旅行家」として、世界の様々地域で、現地の人々の家庭で暮らすように旅を続け、人々の生活や生き方を伝えている。NEPOEHT所属(モデル)であり、雑誌、CM、企業講演、トークイベント、国内外TV、ラジオなどメディア出演多数。著書に「暮らす旅びと」(かまくら春秋社)。また、内閣府平成28年青年国際交流事業の効果検証に関する検討会委員。観光庁「若旅★授業」講師。とっとりふるさと大使。米子市観光大使。国際協力機構JICA「なんとかしなきゃ!プロジェクト」著名人メンバーなども勤める。

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